Tokyo Sunset Banana Label Club, 2004



Correspondence from BERLIN
August, 2004
ドイツのバナナは果物のホームラン王。スーパーなどで見かける計量器には、10割に近い確率で1番目にバナナのアイコンがあります。国産のじゃがいもやキャベツを抜いて、青果全般の中でのナンバーワンはなかなか立派。しかもだいたい青果売り場のスタート付近が指定席。「むむっ、何かこれにはわけがありそう」と半ばこじつけにも近い執念でやってみましたルーツ探し。
***
ほしい量の青果を計量器の台に乗せ、
アイコン付きの番号を押すとピロピロリーンと
値段の入ったバーコードが出て来ます。
***
「なぜバナナは1番なの?」。スーパーやデパートの売り場、自営業の青果店、果ては卸し市場と聞き込みをするも、このご時世にとんでもなくどうでもいい質問と思われたのか、たらい回しにされたり、返答なしのままだったり、「うむぅー」と腕を組んで唸られたりで明確な答えに行き着きません。
***
ほらね、バナナはいつも1番。
他の青果はバナナのような指定席がなく、
それが私の疑問心を大きく膨らませました。
***
「バナナがナンバーワンでなくてどうする」と冗談まじりに答えていくつかの資料を手渡してくれたのは、以前お伝えしたバナナミュージアムの館長さん。そこには「なぜ1番なのか」に結びつく「凍てつく寒さのドイツで、どうして南国の果物バナナなのか」が記されていました。

敗戦国として終戦を迎えたドイツは食料調達がまだまだ困難で、国民の健康回復も視野に入れた政治対策が切望されていました。栄養価の高いバナナにいちはやく目をつけた西側の首相アデナウアーは、西ドイツの参加無くして実現はありえないとされていたEEC欧州経済共同体(EU欧州連合の前々身ともいえる機関)の発足に先立ち、「バナナの輸入免税を許してくれるなら」という切り札を出しました。この意見は受け入れられ、西ドイツはEECに加入。欧州でバナナを安く輸入する政策を取り入れることに成功したのです。
***
国民の戦後復興をバナナに託したアデナウアーの政策、全国バナナ促(食?)進運動。その影響がスーパーなどの販売店にあらわれ、計量器は1番目に、誰もが必ず通り目にする青果売り場スタート付近になったのではないかな? というのが私の推測。
***
ちなみに、戦後この希望に満ちた果物を食べて大きくなった子供たちは「バナナ(で育った)世代」と言われています。西ドイツの経済成長とともに、国民の健康回復、栄養促進を支えたバナナの姿はなるほどナンバーワンに相応しい。
***
***
けれども、そんな推測もここ数年のシステム改良の波には逆らえません。計量器が撤去され、レジで計量即会計。つい忘れがちな計量の手間とその度ごとにレジから青果売り場まで戻り計量し直す厄介さが省かれました。ナンバーワンの王冠の輝きと引き換えにやってくるドイツバナナの未来では「なぜ1番なの?」という疑問すら湧いてこないのかもしれません。
(やまだようこ/ヨーロッパ通信)
***
バナナエッセイお休み中は、東ドイツの生活文化を探究してました。日帰りで地方に点在する資料館を訪れる小旅行にはまっている私です。
http://www.bearhunt.de
***
Get back to CONTENTS page.
Vol.1 Vol.2 Vol.3
Vol.4 Vol.5 Vol.6
mail to Tokyo Sunset Banana Label Club
go back home