Tokyo Sunset Banana Label Club, 2005



Information of Banana Labels
夕焼けバナナ倶楽部はアジアで最初のバナナラベルコレクションサイトとして2000年1月1日にスタートしました。
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(1)バナナシールかバナナラベルか
バナナに貼ってある小さなラベルをなんと呼ぶか――夕焼けバナナ倶楽部は、まずそこから始めなければなりませんでした。
日本では“バナナシール”と呼ぶのが一般的ですが、これでは英語として通じません。
北米では“ステッカー”、欧州では“バナナラベル”と呼ぶ人が多いなか、アジアではどうするか……日本でステッカーというと、自動車のボデーに貼るプラスチック製のものが思い浮かぶこと、“ラベル”の呼称はワインラベルなどコレクションと関係がふかいこと、この2点の理由から、欧州とおなじように“バナナラベル”と呼ぶことにしました。
新聞社や放送局にも受け入れていただき、“バナナラベル”の呼称でご紹介いただいています。
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ちなみに日本で“バナナシール”と呼ぶようになったのは、1960年代のチキータバナナが“シール”という呼称でキャンペーンをしていた名残りだと思われます。“バナナシール”というのは1960年代以前の英語だったのです。
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(2)世界で最初のバナナラベル論争
  ――ファイフス vs. チキータ
世界で最初にバナナラベルを貼った会社はどこか? このシンプルなテーマは案外デリケートな問題なのです。これについては風説も多いのですこし説明しましょう。
世界で最初にバナナラベルが貼られたのは英国のアイルランドで創業したファイフス社(Fyffes)が1929年に実施した“Fyffes Blue Label”キャンペーンであることが知られています。当時、チキータのバナナには、ラベルではなく紙の帯が巻かれていたそうです。
であればファイフス社で決まりかというと、そんなに簡単ではないという話なのですが――
写真準備中……
資料によると、当時のファイフス社(Elders & Fyffes)は、アメリカの巨大バナナ資本であるユナイテッド・フルーツ社(United Fruits of Boston)の子会社でした。両社の資本関係は、1902年にユナイテッド・フルーツ社がファイフス社の株式の45%を取得したことに始まります。1913年には残りの株式すべてを取得していますから、キャンペーンの時点でファイフス社は100%子会社だったのですね。
写真準備中……
チキータ社(ユナイテッド・フルーツ社から改称)が世界で最初にバナナラベルを貼った――とする説の根拠はそこにあります。そこでチキータの米国サイトを注意ぶかく読むと……それに近いニュアンスを漂わせながらも厳密にはそうとはいっていない、微妙な表現になっています。そこになにか事情がありそうだと考えているのが夕焼けバナナ倶楽部の立場です。
ファイフス(Fyffes)とチキータ(Chiquita)は、欧州でのある一時期を除いて、当時もいまも別のブランドであり、世界で最初のバナナラベルをブランドとして語るときにはファイフスが最初だといわざるを得ないと思います。しかし、バナナ資本あるいは会社としての話なら、チキータ社が最初だということも間違いではありません。
マツダを買収したフォードモータース社が「ロータリーエンジンを世界で初めて実用化したのはフォード社」だと主張したら違和感がありますが、共同開発した車種であればまあ仕方ないかな、という気もします。ではRX-7はマツダでRX-8はフォードなのか……この問題はそれに近いものがあるように思います。
はたして“Fyffes Blue Label”キャンペーンはどちらの発案だったのでしょう?
夕焼けバナナ倶楽部ではこの他にも資料を入手しており、いずれ詳しくご紹介する機会があると思います。
バナナラベルにして、文献にもとづくきちんとした理解を積み上げていくことは、夕焼けバナナ倶楽部の大事な活動のひとつだと考えています。
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Banana Trees in Tokyo(ガスの科学館)
(3)バナナはどっちが上なのか。
 はじめにバナナの天地について確認しておきたいと思います。写真のように,、バナナはヘタの部分から上に向かって生えています。
 東京都では小笠原諸島まで行かないとバナナの木は見られないと思っている人がいますが、臨海副都心にあるガスの科学館(東京ガスの施設)でバナナの生木を身近に見ることができます。
東京の公園にもバナナの木があります。
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都内某くだもの店の店頭にある台湾バナナの箱
Banana Box for Retailers in Tokyo
(4)バナナのラベルはいつ貼られるのか
 ラベルを貼るのは輸入業者なのか輸出元なのかについてはさまざまなケースがあり、結論をいうと、あらゆる流通段階でバナナラベルが貼られています。
 写真のように、くだもの屋さんに届く箱にはすでにラベルと同じマークが印刷されています。これはアメリカの大手バナナ会社も同様ですから、輸入した会社が貼るものでないのは確かなようです。
 バナナの大手ブランドのマニュアルでは、パッキングハウスと呼ばれる産地の出荷場で計量の後、箱詰めされるタイミングでバナナラベルを貼ることになっています。
 これが基本なのですが、現実にはスーパーマーケットやフルーツショップが独自にブランドを設定し、もともと貼ってあったラベルを貼りかえることもあるようです。
 ブランドの表示ですから、販売の単位あたりに最低1枚が必要になります。出荷の段階で一房あたり3ヵ所のラベルを貼付するのが標準的だそうです。
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(5)バナナ・ラベルとラテン
 東南アジアが原産なのに、わたしたちがバナナから連想するイメージはカリブ海に浮かぶ島々ですね。バナナ・ラベルの“ラテン”にはアメリカ経由で輸入されたアメリカナイズされた“ラテン”イメージが含まれていることを、わたしたちラベル愛好家は承知しておく必要があるでしょう。
 これはニホンのラテン音楽がアメリカ産ラテン・ブームの再生産に陥りやすいという問題ときわめて近い関係にあります。ノスタルジックなアメリカ経由の“ラテン”が否定されているわけではなく、それはそれとしてひとつのジャンルになっているようです。
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(6)バナナ・ラベルと米西戦争
 わたしたちが親しんでいるバナナは、ラテン・アメリカ諸国とフィリピンから輸入されたものがほとんどですが、これらはアメリカがスペインと戦争することによって守りぬいた巨大バナナ資本とでもいうべき経済権益と無関係ではありません。
 巨大バナナ資本の代表格 The United Fruites Company が第二次大戦後に打ちだしたブランドが今日のチキータです。ラテン・アメリカの歴史にくわしい人は、バナナといえばカストロやゲバラを連想をするそうです。いまでも南北問題や貿易摩擦が論じられる場面でバナナはきまって問題になります。
※この記述に関して“あれは砂糖ですよね……”とのご指摘をいただくことがありますが、中学校でそこまでしか教えなかったことの弊害だと思います。昭和40年代の高校の教科書にはしっかり記述されていたことをご記憶のかたも多いと思います。
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(7)人権と衛生
南の島はいいよねえ、お昼寝していてもバナナはなるし」――そうであってほしいのですが、残念ながらバナナ栽培はいまでも搾取や貧困と密接な関係があります。そのほか農薬や輸送のために使用される薬剤など、輸入食品の安全性の問題もあります。
 海の向こうの貧困も、衛生の問題も、ほっておくといずれコレクションをたのしむことができなくなってしまいます。ラベル・コレクションを政治思想の混乱に巻き込むことは避けるべきですが、バナナのように傷みやすい果物が遠く離れた日本で日常的に、しかも安価に手に入ることのたいへんさを知ることは必要でしょう。
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ラベルを剥がしそこない破損したアロハ・バナナ(ノースショア)
Broken Banana Label from North Shore HAWAII
(8)ラベルを剥がす
せっかくコンディションのよいラベルを入手しても、剥がすときに傷つけてしまうことがよくあります。ラベルを果指からきれいに剥がすのは、けっして容易なことではありません。写真のノースショア産アロハバナナは、情報を得て光が丘団地まで出かけて入手したにもかかわらずラベルを剥離するときに破れてしまった痛恨の一枚です。
ぼくの方法ですが、バナナが2房あるとき、その一方のバナナにドライヤーの柄をはさんで温風の向きを決めます。風向きがもう一房のバナナに貼ってあるラベルであることはいうまでもありません。ドライヤーの温風でバナナラベルがよく乾き、糊が温まったころあいを見計らって、ラベルを持ち上げにかかります。ここまではどのラベルでも同じ基本動作です。
さて、バナナラベルが持ち上がり始めたそこからバナナラベルと糊の個性がでてきます。むつかしいラベルの多くは紙が弱く、ラベルの糊側が裂けてバナナに残ろうとしますね。
そこを刃先の丸いナイフで、バナナ側に残ろうとする糊と紙をすくいあげるようにして、こまめにバナナラベルに戻しながら持ち上げていくと、一度で失敗なくバナナラベルをとることができます。夕焼けバナナ倶楽部ではフランス“OPIEL”(オピネル)社のNo.6を推奨しています。
ほとんどのバナナラベルで使える方法ですから、ぜひお試しください。きっと剥がすときのプレッシャーから解放されて、バナナラベルの収集がより楽しくなります。
この方法の欠点は、バナナラベルの印刷面がシワに弱い(シワが入りやすい)タイプの場合に注意が必要だということです。
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ラベルをアクセントにあしらったノーブランドのペンケース
No Brand Pencil Case with Exotic Banana Label
(9)ラベルをたのしむ
「重複したコレクションはどのように活用しているのか」という質問を多数お寄せいただいてます。すでにコレクションにあるラベルであっても、コンディションのよいものはひとまず保存するのが基本です。そのようなラベルは、週末に落ちついてディテールを比較し、予備として保存する必要がなければ海外のコレクターとのトレードにします。それも必要ないと判断したときには、ノーブランドの日用品に貼ってたのしむコレクターが多いようです。パソコンのケースにバナナのラベルが貼ってある――などは、あたりまえのようです。
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弱いラベルは皮ごとカットして背面から削ぐようにする。
Peeling with OPINEL No.4
(10)ラベルを剥がす II
極めてうすく破れやすいラベルの場合には、バナナの皮ごと切り取って、刃先の丸いナイフで裏側から削ぎとる方法をおすすめします。こうするとラベルを歪めず糊まで新鮮な状態で分離することができます。
肥後守が文房具店から消えてしまったいま、夕焼けバナナ倶楽部ではラベル専用ナイフとして“OPINEL No.6”(刃渡り5センチの小さなナイフ)を推奨しています。
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(11)コレクションの保管と整理
大切なバナナラベルの保管と整理について問い合わせがありました。決まった方法があるわけではありませんが、収集スタイルに対応するかたちで4つの方法にまとめられます。

No.1 パラフィン紙でくるむ
基本的に切手コレクションの取り扱いと同じだと思ってまちがいありません。ラベルの大きさにあわせてひとつひとつ丁寧にパラフィン紙でくるんだあとは、お好みのコレクション・ブックに整理して保管します。格調の高いコレクションとなり市場価値が生まれる反面、手軽で気楽なたのしさは遠ざかります。

No.2 台紙に貼る
ラベルとけんかしないよう落ちついた色合いの台紙に貼って整理する方法です。わたしの場合は、はがきくらいの大きさ(A6版)のマットグレーの台紙を使っています。名刺サイズの台紙を使っている人もいます。余白に見つけた日付と場所をメモし、バナナのラップに貼られている大きなステッカーも裏面を利用して保存するのです。ラベル単体の保存と併用するとよいでしょう。
この方法はハンドリングに優れ、ラベルを歪めずに整理できることが長所です。台紙のサイズを標準的なサイズにすればカード整理の用品が利用できます。短所はかさばることと、トレーディングには向かないことです。

No.3 ネガ袋に入れる
大きな写真用品店にいくとカットしたネガを入れるための「ネガ袋」と呼ばれる透明の袋があります。ラベルの糊が貼りつかないように工夫して35ミリフィルム用のネガ袋に入れます。
海外とトレーディング(交換)する場合にはこの方法がベストです。夕焼けバナナ倶楽部では「カンダ式整理法」と呼んでいます。
長所はかさばらないこと、ネガに準じて用品が豊富なこと、トレーディング(交換)に向いていることです。短所はラベルの歪みが矯正できないこと一覧性に欠けることです。

No. 4 糊がつかない大きな台紙にまとめて貼る
海外のコレクターにはこのての人が多いのですが、あまり見栄えがしませんし、紛失したり、損傷したりすることがあるのでお勧めしません。
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イタリアのラベル・ファンに郵送したニホンのラベル。
Labels for ITALY
(12)トレーディングを楽しむ
海外には想像を絶する数のバナナラベル・コレクターが存在し、東北アジア地区のラベルに熱い視線を送っています。ラテン・アメリカに近い北米大陸にファンが多いのは不思議ではありませんが、ドイツ以北のヨーロッパもまたバナナラベルの熱心なコレクターが多い地域なのです。夕焼けバナナ倶楽部にはトレードを申し込むメールが毎日のように届いていますが、その半数はヨーロッパのコレクターから送られてくるものです。
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バナナのある部屋 2001.4(椅子)
A Room with Banana Stools /Sakazaki.M
(13)バナナのある部屋
バナナが「ある」ということ――そこから導きだされる光や色彩から一連のインテリア・デザインを創作しようと試みるアーティストのソファの習作です。(クレイ・モデルを撮影)
これまでバナナのある風景はいつもショウワ(昭和)を象徴していました。1990年代に思春期を生きた若いアーティストの「バナナのある部屋」にはなにが映しだされるのでしょう。
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ユナイテッド・ブランズ社の100周年記念ラベル。
1カットのバナナにペアで貼られていた。
(14)ペア・ラベル
バナナの果指に2種のラベルが同時に貼られているのを見ることがあります。有名なのはチキータ社が25年ごとに発行する記念ラベルですが、このたび四国で販売されたアロハ・バナナにペア・ラベルがあることが確認されました。減農薬栽培をアピールするメッセージ性の強いラベルです。今後のトレンドとなるかどうかが注目されています。

減農薬栽培であることをアピールするアロハのペア・ラベル。
愛媛県のコレクター武内伸夫氏の報告による。
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*Remarks
いまだ勉強不足ですが、ひとりの消費者の側からバナナ・ラベルに送る目線として、いくつかの話題をご紹介いたしました。
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